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専門性とノウハウを吸収し、プロダクトとしてリデザイン ― SBIビジネス・ソリューションズ『請求QUICK』の事例

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2021年に『請求QUICK』をリリースしたSBIビジネス・ソリューションズ株式会社(以下、SBIBS社)。『請求QUICK』は、請求書の作成・発行から入金消込・仕訳出力を電子化できる、経理のためのクラウド請求書管理システムです。

このサービスのローンチに向けて、A.C.O.ではプロダクトのUX/UIデザインを担当。同時に、Webマーケティングの起点となるサービスサイトと、利用者に機能や活用方法をレクチャーするユーザーサポートサイトも開発しました。

今回、このプロジェクトを主導したSBIBS社代表の夏川さん、そして現場でサービス企画を担当した同社の吉村さんと親会社であるSBI FinTech Solutions株式会社の寺岡さんとともに、A.C.O.の吉岡、益田を加えた5名で振り返りを実施。高い専門性が求められる領域でのプロダクト開発に、どのように両社で取り組んでいったのかをお聞きしました。

「経理を愛している」酸いも甘いも噛み分けて、新しい金融体験に誘うプロダクトを

――SBIBS社は長年経理業務を主たる事業とされていますが、『請求QUICK』のアイディアはどのような経緯で生まれてきたのでしょうか?

夏川さん 僕は親会社であるソフトバンクに新卒で入社し、SBIBS社に配属後50社以上の経理業務に携わってきました。サービス企画として、『経費BANK』『承認TIME』という2つの自社クラウドサービスにも携わっています。

『請求QUICK』の構想は、数年前にお客さんから「請求書発行側のサービスもほしい」と言われたのが始まりです。当時既に同様のサービスが世の中には多数あり、最後発でした。「他の会社と同じ仕組みではつまらない」「SBI独自の強みを出せるシステムにしたい」と親会社の金子(*SBI FinTech Solutions株式会社代表 金子 雄一氏)と話している中で、彼から出てきた言葉が「SBIBS社は経理をこよなく愛している」というもの。経理の酸いも甘いもわかっているSBIBS社らしさを取り入れてシステムをつくってみたらいいんじゃないか、という考えでした。

さらに、金融グループであるSBIのメリットも活かして、クレジットカード事業やファクタリング事業なども組み合わせた新しい請求書発行システムを作ってみよう、という形で企画が立ち上がりました。

吉村さん 私はこのプロジェクトに関わるまで、受託チームに所属して8社ほどの経理業務を担当してきましたが、月初に来る“魔の一週間”が本当に辛くて…「経理を愛してる」と言えるのかな(笑)。むしろ「楽したい、自動化したい」と思っていました。経理業務はアナログな部分が多いので、仕様を決める際は「この作業は大変だから、プロダクトではこうなるといいな」と、煩わしさをなくすことを考えていました。

寺岡さん 私はシステム開発を担当しており、経理業務には携わったことがありません。今回のプロジェクトで、初めて2人から実務部分を教えてもらいました。経理の方は正確さを求められるのに、各所からもらうデータはばらばらで、私もよく怒られていました。しかも、その怒る気持ちをなかなかわかってあげられない。手間のかかることをやっているのに感謝されにくいのは辛いだろうなと、ずっと感じていました。

――これだけのノウハウや強みが詰まったプロダクトで、基本無料という価格設定には驚きました。

夏川さん クラウドサービスはいずれシステムがコモディティ化して、どれも特色のない状態になるもの。だからこそインパクトのある打ち出し方を模索していました。

経理業務をデジタル化したところで、実際に「効率化した」「業務が削減できた」と感じることは少ないと思います。そこに対して企業がコストを支払うことに、僕たち自身も疑問を抱いていたんです。「請求書自体、無くなればいい」と。いずれ無くなるものに対してコストを支払ってもらうより、新しい金融体験の仕組みをつくり、そこに価値を感じて対価を頂けるようなサービスにしたかったんです。中小企業の皆さんにも経理業務のデジタル化の体験、そしてその先にある金融体験を提供したいと思い、この料金体系にしました。

もちろん葛藤もありました。自分たちのやってきたことには自信があったし、価値あるプロダクトをつくれるはずだ、と。それでも限られたパイの中で拮抗することはわかっていたので、それなら「無料で展開したら、中小企業の方は受け入れてくれるのか?」という挑戦をしてみようと決断しました。そういう意味で『請求QUICK』は、僕たち自身にとってもチャレンジングな取り組みなんです。

知り尽くすことに貪欲に。専門性とノウハウを吸収するための2つの施策

――A.C.O.への依頼は、どのような経緯だったのでしょうか?

夏川さん 実はもともとプロトタイプができていたのですが、社内やグループ企業にお披露目した際に辛口コメントをいろいろともらい、欠けていたUX/UIという観点に気づいたんです。そこでUX/UIに強い会社としてモンスターラボ/A.C.O.を紹介されて、お願いすることに決めました。どうせつくるなら、ベストなものをつくりたいですからね。

寺岡さん 1年かけて開発して、もうほぼ完成というところでしたが、「納得いくまでデザインと機能設計を見直したほうがいいんじゃないか?」と考え、つくり直すことにしました。

――依頼を受けて、A.C.O.のファーストアクションはどのようなものだったのでしょう。プロトタイプがあったので、着手しやすかったのではないでしょうか?

吉岡 プロトタイプはとても助けになりました。ただ、そもそも経理をやったことのない僕からすると、経理業務は専門性も高くあまりにも複雑で、システム上で何が起きているのか全く理解できなかったんです。「このボタンを押すとこのシステムが応答する」ということはわかるんですが、それによりどのような経理作業が行われているのかまではわからなくて…。

寺岡さん そこで実施したのが勉強会ですね。2時間1コマを数回に渡ってみっちりと。

吉村さん 入金消込など入金周りについては私からでしたが、全体的な部分は夏川さんから吉岡さんに個別レクチャーする勢いでしたよね(笑)。

夏川さん 吉岡さんを筆頭に、A.C.O.の皆さんは教えるとしっかり理解してくれるんです。普通、あそこまで真剣に学んでくれないんじゃないかな。知識ゼロのところから、僕たちを理解しようとよくここまでついてきてくれたなと思います。

吉岡 最初に教わったことは、経理のプロからしたら本当に初歩的な内容だったと思います。それでも、キャッシュフローの概念が入ってくるとなかなか理解できなくて、何度も夏川さんにホワイトボードに書いて説明して頂きました。

夏川さん もうひとつ印象的だったのは、「経理業務についてもっと深く知りたいので、お客さんにインタビューさせてほしい」とご提案を頂いたこと。僕たちのお付き合いのある会社を含む計6社で実施することになり、直接訪問して経理業務を再現してみせてもらいました。

吉岡 実際に作業の様子を見てみると、経理業務の実態はもちろん、各社毎にやり方が違うことに気づきました。

このプロジェクトに関わるまでの経理に対する認識は「請求書を発行したり、経費精算している」程度の表面的なものでした。そのため、デジタル化によって生まれる価値の理解も浅く、ハンコレスやペーパーレスが大きなウェイトを占めると思っていましたし、効率化するにしてもどういった部分をどのようにつくれば楽になるのかもあまりピンと来ていませんでした。

しかし、インタビューや勉強会を通して経理業務に関わる方たちのことを知っていくと、業務としては大まかには同じなのですが、取り扱う商品や取引によって仕訳の方法が微妙に異なったり、会社規模に応じてどの部門がどこまでやるのかが異なったりと、表面的に見えている部分だけでは全く認知できていなかった複雑さがあることに気づけたんです。

また、経理の皆さんの金額のずれに対するシビアさや、そこがちゃんとしないとキャッシュフローも読めないことなど、経理のことを知るにつれて、夏川さんのおっしゃる「支払いの手段や管理の仕方が付加価値になり、そこで収益性を出していく」という考えに共感していきました。

――プロダクト開発で特に大変だったのはどの部分でしたか?

吉村さん 経理って会社毎に業務のクセがあって、全ての会社がある程度同じようにと思っても、なかなかそうもいかないところがあるんです。でもシステムを提供する側としては、各社のクセが出ても、最低限対応できる状態を担保しないといけない。その検証が非常に大変でした。時間がかかりましたが、そこを一緒に考えて形にしてくれたのは嬉しく思います。

吉岡 業務に耐えうる仕様にするためにはどうしたらいいのか、さまざまなパターンで起きる問題に対して、ひたすら吉村さんや寺岡さんと一緒に考えて対応していきました。

そもそも自分が設計する時は、その業務領域の人が普段何を考えていて、どの部分に負を感じているのか、業務ドメインについて完璧に理解したいという思想があります。自分の仕事だったら面倒な部分についてわかるけど、自分がやらない仕事の大変さはわからないもの。そこを理解しないまま作っても、使いやすいものはつくれないんです。

ただ、今回は「理解できた!」と思っても、学習していくと1週間後には違う概念が入ってきて、「まだ理解しきれていなかった…」となるのをひたすら繰り返していました。そのため、一度理解したら、その状態で一回画面をつくってみて、意見をもらっては直してみる。そうして常にディスカッションし続けていて、なかば一緒につくっている感じでしたね。

益田 本当に「皆で同じ釜の飯を食う」状態でしたね(笑)。

使いやすさと親しみやすさを磨きこみ、非対面でも自社の強みと「らしさ」を

――実際のプロダクトでは、プロトタイプから主にどのような部分を変更したのでしょうか?

吉岡 プロトタイプの段階である程度の機能は揃っていましたが、一つのオブジェクトに対してアクションできる場所が分かれていたのを、なるべく1か所からアクションできるように変えていきました。

大きいのは、例えば承認経路の設計部分でしょうか。もともとは、請求書を作って申請を出す際、その都度承認経路の選択が必須だったんです。でも一般的に所属する部門である程度承認経路は決まるので、それらをユーザーに紐づくように変更しました。さらに、インタビューや社内でも「早く請求書を出して!」という声をよく聞くので、タスク管理ツールを参考に、経路上で止めている人が誰なのかわかりやすくなるよう考慮して設計していきました。

寺岡さん プロトタイプでは入金消込も簡易的なもので、仕分けの機能もなく、実際にリリースしたプロダクトに対して4割ぐらいの機能しかありませんでした。吉岡さんが入ってくれたことで、新しいシステムに変わった感覚があります。A.C.O.さん側でたくさんリサーチしてくれていたので、いいところを素案として叩いていく、その繰り返しでした。

――デザイン面では、どのような点に注力されましたか?

益田 経理って、堅苦しかったり、つまらなさそうなイメージを持たれやすいと思うので、誰からも親しみやすくとっつきやすいイメージになるように意識しました。具体的には、カラーパレットで色数を増やしたり、ちょっとした部分にビジュアルコミュニケーションをいれたりしています。ただし、ただ派手にすればいいわけではなく、お金を扱うサービスとしての真面目さも表現できるようにしています。

プロセスとしては、まずはじめにブランドパーソナリティをつくりました。サービスを性格で表した時の「らしさ」について、皆で目線を合わせたほうが統一感も出るし、コミュニケーションを考える際の軸にもなると考え、いろいろな方に参加してもらってワークショップを開催したんです。良い意見がたくさん出て、「ただの親しみやすさではなく、愛嬌や憎めなさを出していきたい」といったところまで踏み込めたことで、ブランドの雰囲気や性格が見えてきました。サービスサイトの開発でも、ここで掴んだ「らしさ」を表現できるように心がけました。

寺岡さん 『請求QUICK』は、これまで夏川さんが対面営業でやられていたものを、非対面営業の形に置き換えたプロダクト。どうすれば非対面でもお客さんに満足してもらえるか、何度も考えました。

益田 ディスカッションしていく中では、皆さんのデザインに対する解像度がどんどん上がっていくのも感じましたね。

吉岡 寺岡さんは「デザインは素人なんで」という枕詞をよく使っていましたが、時間がたつにつれてA.C.O.での社内レビューかのようなコメントを頂くようになって(笑)。吉村さんも「ここはこの方が使いやすくないですか?」と、より使いやすい案を出して頂くこともありましたよね。

夏川さん 僕たちが希望を伝えると、ちゃんといくつも案を作ってきてくれるので、さらに「こうしたほうがいいんじゃないか」というアイディアが出てくるんです。その追いかけっこが何度もありましたが、ここまで付き合ってくれたことに感謝しています。

お互いに学びあい、レベルアップするワンチームの力

――振り返ってみて、今回のプロジェクトはいかがでしたか?

夏川さん 『請求QUICK』は日本全国の中小企業の経理業務のDX化、そしてその先に新しい金融体験を提供していくために、これからもA.C.O.の皆さんと一緒につくっていきたいと考えています。吉岡さんには引き続き携わって頂いていますが、前回とは比べものにならないぐらい経理の知識もついているので、何かあるといつも意見を聞いています。

A.C.O.さんは単なる“業務委託先”ではないんです。僕自身もうちのメンバーも、かなりレベルアップして業務の幅が広がりました。ご一緒することで自分たちも研ぎ澄まされていくし、UX/UIの知見も深まっていく。依頼した以上に得るものがあるので、自社メンバーのレベルアップを図りたい方は是非A.C.O.さんに依頼してみてください。

寺岡さん A.C.O.さんは、真摯にサービスに向き合って、“ワンチーム”で一緒にいいものを作っていきたい会社さんにはとても合うと思います。

吉村さん お願いする側と受ける側というビジネス的な側面だけでなく、一緒に学びながらやれたのがよかったです。途中でくじけることなく、最後まで妥協せずにやりとげられたのは、ワンチームでできたからだと思います。

益田 現在SBIBS社さんに関わらせて頂いている他のメンバーも、経理の本を何冊も課題図書として読んでいます。私自身ももちろん、本当に皆が本気になったプロジェクトでした。

吉岡 「いいものを誰かに届ける」ことが重要だと思うので、お客さんと作り手ではなく、ワンチームであることは日頃から大切にしています。今回は、その中でもかなり深いところまで関わらせて頂いたプロジェクトでした。皆さんが受け入れてくれるから、僕自身も前のめりにコミットできる。深い知識を得て、とにかく「いいものをつくる」ことに集中してエネルギーを向けられたプロジェクトでした。

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