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意外と知らないUXデザイン

#5 MVP機能を決めるために必要なのはユーザーストーリー

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こんにちは。UXデザイナーの村上です。この「意外と知らないUXデザイン」シリーズでは、主にサービス開発のプロセスに必要な考え方や手法、A.C.O.が独自に工夫していることをお伝えしてきました。そして今回はシリーズ最終回となります。

これまでの記事で紹介してきたデザインスプリントなど、サービス開発のワークショップにおいて参加者は未来志向で理想的なサービスの構想を描きます。新しい価値を考えているため、それは当然のことです。

しかし、どんなに理想的なサービスでも実現できなければ「絵に描いた餅」になってしまいます。その構想を実現可能かつ最大限の価値を持ったものにするためには、何にどれくらいのコストと時間をかけるのかという取捨選択、すなわちMVP(Minimum Viable Product)の決定が必要です。これはサービスの初期のあり方と将来像に大きく影響する大事な工程です。

そこでシリーズ最終回では、デザインスプリントなどで考えたアイデアの中から最初に開発するものを決めるプロセス、「MVPの決定方法」についてご紹介します。

MVP(Minimum Viable Product)とは、簡単にいえば、顧客に価値を提供できる最小限の製品や、それを使ったアプローチのことをいいます。限られた時間で顧客のニーズに基づく商品・サービスを構築することができるため、無駄なコストの削減にもつながる手法として注目されています。

主に事業における仮説の検証をするために、市場に投入される製品バージョンとして用いられることが多いです。

引用元:ボクシルマガジン

MVPの決定にはユーザーストーリーマッピングが有効

MVPを決定していくプロセスでは、ユーザーストーリーマッピングという手法が役立ちます。

ユーザーストーリーマッピングでは、ユーザーの行動ややりたいことを洗い出し、時間軸に並べ、そのストーリーに沿って今まで考えてきたアイデアを分解、機能化してマッピングしていきます。

ユーザーストーリーマッピング全体像イメージ

アイデアを分解してマッピングすることで参加メンバーでサービスの全体像を理解し、認識を合わせることができます。

そして、マッピングした機能に優先順位をつけて、初期にリリースする機能を決めていきます。

それでは、ユーザーストーリーマッピングを以下の3つのステップに沿って紹介していきます。

  • 1ユーザーストーリーの大枠の流れを作る
  • 2ストーリーに沿ってユーザーがサービス上で実行する具体的なタスクを書き出す
  • 3各タスクを実行するためにサービスが提供すべき機能や情報を書き出す

1.ユーザーストーリーの大枠の流れを作る

まずはじめに、これまで出してきたアイデアをプロットするための大枠のストーリー構成を作ります。

ストーリー構成は、サービスの使用前、使用中、使用後のフェーズごとに分けると考えやすいです。また、「初めて使用するとき」「継続して使用するとき」の視点も盛り込めると、よりサービスの利用シーンを網羅して考えることができます。例えば、初めて使用するときはサービスの使用前に「ユーザー情報を登録する」などのフローも考えられるといった具合です。

2.ストーリーに沿ってユーザーがサービス上で実行する具体的なタスクを書き出す

ここからはアイデアを具体的な機能に落とし込む作業です。ストーリーボードで描いたアイデア(過去記事「実現するアイデアの作り方。アイデアの具体化のためのフレームワーク」を参照)で、具体的に実行できるタスクを書き出していきます。

タスクの粒度は概ね下記の例ぐらいにすると良いと思います。

アイデアをタスクに分解した例

  • 〇〇を一覧から選ぶ
  • 選んだものの詳細情報を閲覧する
  • 選んだものを保存する
  • 保存したものを予約して店頭で受け取る
  • 予約確認のメールを受信する

タスクを洗い出したら、上の写真のように該当するストーリーの大項目の下にプロットしていきます。

3.各タスクを実行するためにサービスが提供すべき情報や機能を書き出す

プロットしたタスクを実行するために、どんな情報を見て、選択して、決定して、どのように実行するのかという観点で具体的に必要な要素を書き出していきます。

右の写真の例では「チケットを購入する」というタスクで必要になる機能や情報を書き出しています。

例えば下記のようなものがあります。

  • 「クレジット決済」「コンビニ決済」「銀行振込」などの決済機能
  • 「ポイント利用」「プロモーションコード利用」などの特典利用機能
  • 「会員登録」「購入促進のSMS」などの購入する際に合わせて実行できる機能

このように「チケットを購入する」という1つのタスクに対して、それを実行する上で必要になる機能的要素と、アイデアとして出した価値になる情報を具体的にマッピングしていきます。

この作業では「技術的に実現可能か」「クライアント側で必要な情報を揃えることができるか」という実現性も加味しながら洗い出していく必要があります。そして、優先度が高いものを上部に、優先度や実現性が低いものは下部に配置しておくことで、MVPの決定がしやすくなります。

コツは、まずはじめにざっと作ってしまうことです。ここまで議論を重ねてきたことの全体像を早い段階で見える化することで、足りない要素なども見えてきやすくなります。

また、1〜3でプロットする項目によって付箋の色を変えておくことも重要です。

搭載する機能を見極め、マップ上にMVPの線を引く

ストーリーボードなどを使って描いてきたアイデアは、どちらかというと実現性よりも理想を含んだアウトプットであることが多いです。アイデアを機能に分解することで、理想ではなく現実的に実現できることとやるべきことが見えてくるはずです。

さて、1~3までの作業が終わったらいよいよMVPをどこまでとするかの線引きをします。

3で洗い出した機能を以下の4つに分類し、ユーザーストーリーマッピング上にラインを引いていきます。

赤い実線より上がMVP

① MVP
サービスあるいはビジネス上必要なものであり、現状のリソースで実現可能な機能

② 次フェーズにやるもの
実現したいが現状のコストやスケジュール、技術的に初期フェーズでの実現が難しい機能

③ 遠い将来にやるもの
現状のリソース以上に大きな外的要素( ex 組織変革、テクノロジーの革新的な進歩、膨大なデータなど)が必要な機能

④ やらないもの
サービス本来の価値を実現する上で必要ない機能

①がサービスに必要な最小限の機能であり、初期にリリースすべきサービスの範囲、すなわちMVPです。

また、MVPだけでなく②③④も明確にしておくことで、サービスのロードマップをある程度想定することができます。サービスはリリースしたら終わりではなく、リリース後にユーザーに利用され成長拡大していくため、このロードマップを描いておくことも重要です。

この分類作業において、③④はアイデア出しやユーザーストーリーマッピングの作業段階で議論されていて参加メンバー内ですでに認識が合っていることが多いため、比較的スムーズに行えるはずです。

一方で線引きが難しいのは②です。②に分類するかを判断するためには「どれくらいの開発インパクトがあるのか」「開発チームだけでなくクライアント側のリソースはどれくらい割けるのか」「コストやスケジュールはどれくらいかかるのか」といった点を考慮した検討が必要になります。

そのため、ワークショップの時間内で決めてしまわずに、各担当者が持ち帰って検討する時間をとる場合もよくあります。またクライアント側から「MVPとして本当に必要なものを今一度社内で整理したい」という要望が上がることもあります。そのような検討時間を経て最終的にそれぞれが考えてきた内容を付き合わせ、MVPを決定します。

アイデアを世に出すために現実と向き合う

ここまでがMVPの決定方法のご紹介でした。

ちなみに、A.C.O.ではこの工程をクライアントと一緒に行うようにしています。それまで話し合ってきたサービスの価値について、より具体的な共通認識を持つことができ、課題やハードルになるポイントについても網羅的に把握することができるからです。

クライアントとデザインスプリントを行う様子。A.C.O.ではアイデアのストーリーボードの隣にユーザーストーリーマッピングのエリアを配置することで、アイデアから分解した機能がユーザーストーリーのどこに当てはまるのかを視覚的に判断しやすいよう工夫している

またMVP決定の作業におけるポイントは、現実的な思考を持って取り組むことです。冒頭でも述べたように、MVP決定前までの作業において参加者は未来志向で理想的な思考によってサービス構想を描いてきたと思いますが、ここで思考の転換をしてください。

これまで議論を重ねてきたサービスの価値を実現するためには、現実と向き合うことが不可欠なのです。

「意外と知らないUXデザイン」シリーズを読んでいただきありがとうございました!

「意外と知らないUXデザイン」シリーズ、いかがでしたか?主にサービス開発を行うために実際にA.C.O.が業務で取り組んでいる工夫や活用している手法についてお伝えしてきました。まだの方は是非読んでみてください。

バックナンバー:「意外と知らないUXデザイン」シリーズ

世の中のサービスやそれを実現するテクノロジーは超高速で進化しています。その波を捉えることも大切ですが、一方で利用する側の人間はそんなに早くアップデートされないこともまた事実。その矛盾やズレを感じとることも忘れず、これからも本当に求められる「価値」というものを実現していくためにどんなことができるのか、試して検証して(たまに失敗しながら)チャレンジしていきたいと思います。

シリーズ内で書ききれなかった取り組みもまだまだたくさんあるので、また別の機会に紹介させていただきます。今後もご期待ください!

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by Michiko Murakami

京都工芸繊維大学デザイン経営工学科卒業。ICT商材の総合商社、アプリケーション開発会社勤務を経て、現在に至る。

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