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カスタマージャーニーマップの中に潜む、解決すべき本質的な課題を見つける方法

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この記事はニューヨークのデジタルプロダクト開発会社・Fuzzの記事を翻訳したものです。Fuzzは私たちA.C.O.も所属するMonstar Labグループの会社の一つです。Fuzzが、実践的なサービス設計、プロダクト開発の経験から知り得た6つのアドバイスをお届けします。

原文はこちら

The Hidden Parts of the Journey: How to Discover Customer Problems Worth Solving

新しいプロダクトを立ち上げることは、本質的にリスクを伴います。成功を保証することも、顧客がどのように反応するかを正確に予測することも不可能です。なぜなら、どのような価値提案がブレークスルーにつながるのか、顧客が本当に求めている機能は何か、どのようなタイプのユーザー体験を求めているのかを知り得る明確な指針は無いからです。

しかし、プロダクト開発が全く先の見えない混沌とした状態ということではありません。プロダクトを市場に投入するまでわからないこともありますが、ユーザーが抱える問題に焦点を当てることで的外れなプロダクトを開発するリスクを減らすことはできます。

開発プロセスを正確に把握して潜在的な解決策がまとまれば、無駄な作業を減らせます。そうすることで、最終的にはユーザーが本当に求めているプロダクトを開発することができるのです。とはいえ実際に実行していくのは難しいものです。大企業は通常、異なるソースからのデータを大量に取得しているため、カスタマージャーニーを分析する際に本当に必要な情報を抽出することが難しくなります。一方アーリーステージのスタートアップには逆の問題があり、分析できるデータがほとんどない中で、少数のユーザーから出てきたアイデアを素早く「検証」していかなければならないというプレッシャーに直面しています。

では企業の規模に関係なく、どうすればユーザーにとって価値のある、解決するべき課題を発見できるのでしょうか?

答えの一つは、ユーザー体験で注目すべきポイントを見定めることです。Fuzzでは、顧客のニーズが満たされていないことを発見するためにカスタマージャーニーの隅々まで目を向けます。そのために、人間中心設計(HCD)からデータサイエンスまでさまざまな方法論を活用します。今回の記事では、私たちが実践している手法をいくつか紹介します。

1. 解決策を探る前に、調査から得たデータを基に仮説を立てる

素晴らしいアイデアからプロダクト開発のプロセスを始めるのは当然のことです。そして、プロセスの「作る」部分を本格的に始める段階では、チームのモチベーションも上がります。しかし、テストしたい解決策が苦労して手に入れたユーザー調査の結果から導かれたものではなく、根拠のない仮説に基づいていたら、本質的でない問題に目が向けられてしまいます。そうすると、努力して手に入れた情報や時間などを無駄にしてしまう可能性が高くなります。そのような事態を防ぐために、自分がすでに持っている定性・定量的な情報を時間をかけて読み込み、ユーザーが置かれている状況に関して理解を深めておく必要があるでしょう。

あるクライアントのECサイトのコンバージョン率を向上させるプロジェクトにて、私たちが直感的に選んだのはユーザーフローの最初の部分を再設計することでした。しかし行動データを分析した結果、ユーザーの離脱率が高くなっているのはより遅いステップ、チェックアウトに近い段階で発生していることがわかりました。これらの洞察を用いて、ファネル最適化のための仮説を適切な領域で使うことができました。

2. エスノグラフィーの手法や専門家の力を借りて問題を深く掘り下げる

ユーザーへの理解が深まれば、効果的な調査計画を立てやすくなります。しかし、ユーザーの表面化していない本質的な課題を特定し、チームが持つ思い込みを無くすためには、より深く課題を掘り下げていくことが重要です。この手法は、特殊な産業を相手とするプロダクト開発の中でより活かされます。エスノグラフィーの手法は、ユーザーのメンタルモデルを理解し、見落とされたままになっている課題を特定するために非常に有効です。また、業務内容や専門知識について専門家に直接インタビューをすることで、特定の領域でエキスパートになるまでの時間を短縮することができます。

大手飲料会社から現場の社員が使用しているデジタル営業ツールの改善に協力してほしいとの要望を受け、リサーチチームを現場に送ったときの写真です。その結果、現場の担当者が顧客のニーズを把握するためにデジタルツールとアナログツールの間を埋める役割を担っていることがわかりました。この観察結果から、断続性のないカスタマージャーニーと、それに沿って顧客のニーズを把握する製品を作成することができました。

3. 体験と体験の「間」に焦点を当てる

多くの場合、顧客価値と企業価値を提供するために不可欠なサービスの鍵となるユーザー体験に焦点をあてます。その際、「コアとなる体験の前後には何が起こるのか?」 「デジタルから物理的なタッチポイントへ、あるいはデジタルサービスから別のデジタルサービスへなど、個々の体験が繋がる瞬間はどのように生まれていくのか?」といった質問を問いかけることで、スムーズなユーザー体験を意識できます。それだけでなく、カスタマージャーニーをプロットすることで、別々の体験が重なる瞬間に引き起こされる見逃しがちな課題を浮き彫りにすることもできるでしょう。

デジタルオーダーの利便性はレストランの顧客にとって大きな付加価値となりますが、予想外のところで店内での体験に影響を与える可能性があります。あるファストフード店を運営するクライアントを支援するために、現状のカスタマージャーニーをプロットし、デジタルオーダー後の店舗内導線の分かりにくさなど、食品の受け取り時に発生する多くの問題を特定しました。

4. エンドユーザーだけでなく、プロダクトを提供する従業員の課題にも目を向ける

プロダクトの主役はエンドユーザーだけではありません。どのようなプロダクト体験においても、そのプロダクトを運営する会社の従業員は欠かせない存在です。最高のサービスを提供するためには、従業員が持つ課題を理解し、それを解決することが重要なのです。ユーザー調査に利用した手法をビジネスのオペレーション側にも適用することで、軽視されがちな従業員のニーズを特定することができます。

私たちのクライアントであるアメリカの大手スタジアムでは、売店で食べ物を注文するエンドユーザーにとって、受け取り時間の長さが大きな問題となっていました。これを解決するために、私たちは従業員のワークフローを理解し、複数の注文を一度に処理する際の問題点を特定することに着手しました。従業員のためにユーザーフレンドリーな注文端末を構築し、テストを行い、待ち時間を52%削減しました。

5. ローンチ前に、本番に近い環境下でプロトタイプをテストする

プロトタイピングはプロダクト開発の中核となる手法です。特にデジタル体験と物理的な体験を融合させたエンタープライズレベルのプロダクトでは、本番に近い環境でのプロトタイピングが今後必須になっていくでしょう。この環境を整えることができれば、プロダクトを市場に投入する前に技術的な課題の発見や現実的なプロダクトの使用条件を再現することができます。それは、ユーザー体験の中で注目すべき顧客の課題をチームが特定することに役立ちます。

大手チェーン・トレーニングジムの新しい受付の体験をデザインするため、疑似体験できる場所を会社内に用意し、実際の状況を想定したテストを行いました。このテストは、40人以上の調査参加者が様々なタスクを遂行するために受付エリアに入り、現実的な「ピークタイム」のシナリオを想定したものでした。この取り組みを通じて、運営上およびエンドユーザーが抱える主要な問題点を特定し、何度もテストを繰り返すことで解決しました。

6. プロダクトを体験する

必要は発明の母と言われるように、最高のソリューションが課題を直接体験した人によって構築されることが多いのも不思議ではありません。したがって、プロダクトチームはリサーチを通じてユーザーに共感するだけでなく、日常的にユーザーの立場に立つことが非常に重要です。可能であれば、開発したプロダクトを定期的にテストし、顧客の問題や不満を当事者として理解するべきです。この方法はユーザー調査にづいた仮説を立ててプロダクトを最適化し、顧客のニーズを解決するための強力なツールとなります。

プロダクト開発は本質的にリスクの高い道のりが続きます。しかし、適切な顧客の問題に焦点を当てることで成功の可能性を高めることができます。多くの場合、ユーザー体験のどこに目を向けるべきかを考えることで、まだ発見されていないユーザーのニーズを特定することができます。カスタマージャーニーの隠れた部分を調査し、適切な調査方法と原則を採用することで、企業は解決する価値のある問題をより簡単に発見することができるのです。

A.C.O.のUXデザイン部マネージャー 川北奈津から一言

本質的な課題を見つける事はとても重要です。そして、本質的な課題を見つけることができた後に体験と体験をどのようにつなぐのかということがとても求められています。「3. 体験と体験の「間」に焦点を当てる」にあるように、1つの課題を解決するだけでなく、体験と体験の間をつないで、サービスとして1つのアプリケーションの中でシームレスに完了できることが価値となるからです。それによって、ユーザーは1つのサービスの中で完了することができ、サービスとしては人の行動のデータをある1点ではなく線として得られることができます。ブランドの視点から考えると利用時間が長くなることによって、ブランドをより身近に感じることができます。体験をシームレスにつなぎ1つのサービスとして作るためにもカスタマージャーニーはとても重要な役割を果たします。

Written by

Daniel Kalick

Director of Strategy at Fuzz

Fuzz

Fuzz is an award-winning mobile product agency. Fuzz

Translated by Takuya Kobayashi and A.C.O. Journal Desk Team

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